WEB連載

第4回「ハイランダーが知りたいのに出てこない問題」

 こんにちは、コマです。
 両親がこのサイトのスクショを印刷して親戚に郵送したでござる…。

 姪はこれ、このように、とても元気にやっております……。


 話を、話を前回の終わりに戻しましょう! うん! ――そうしましょう!

 「どうして同じブリテン島の中で使われる言葉なのに、地域でこんなに違うのか」

 たぶんね、すんごいややこしい歴史があるんですよ。使ってる言葉が違っちゃうくらいだもの、いろいろあったんですよ。抗争とか! 侵略とか! 興味深い! そうそう、そういうのが知りたかったの!

 ――ということで、近所の図書館に行ってきました。

 館内検索で「ブリテン」と「スコットランド」を入力しただけで、こんなに出てきちゃいました。フォロワーさんにお薦めされてた『ブリテン諸島の歴史』なんて、そのまんまじゃないですか。ねえねえ、これ読めば全部の答えが分かっちゃうんじゃない? 惜しむらくは4巻が貸出中だったことだけど、まあいいよね。また借りてくればいいんだし。なんか漏れ聞く話じゃローマも関係あるらしいからローマって書いてあるタイトルも一緒に借りてきちゃったよ。いえーい! わたしったら気が利くゥ!





















 開始三行。

 なんて言うんでしょう……。すごく興味のあるテーマだし、ハイランダーのルーツにも関わるわけだし、どんどんね、どんどん読んでいきたいのは山々なんです――けど、ええ、なんて言うんですか、気力と体力がありあまる欲望について来られてないって言うんですか。完全に欲望のみ先行しちゃってるって言うんですか。もちろん本の内容には関係ないんです。だって元々面白そうだから借りてきたんだし。――ただね、ただ私の精神がもう行間に適当な間隔で筋肉マッチョが配置されてないと維持できないと言いますか――はい、回りくどいこと言ってないで正直に告白します。筋肉が足りません。


 とりあえずね、こうですわ。いろいろ書いてあったけど、こうですわ。聞いて。

 「ケルト系の住民が住んでいたブリテン島にローマとかヴァイキングとか他国がいっぱい攻め込んできたんだけど、いろいろあってケルト系の言語を話していた民族は北に追いやられた」

 「南のイングランドは、ノルマン人貴族が王様になったりしたけど、いろいろあってそこに住んでたアングロ・サクソン人の話していた英語が定着した」

嘘はついてない。

 いろいろあったんスよ……めっちゃいろいろあったんスよ……でもそれを説明してたらいつまで経ったって終わらないくらいブリテン島って怒濤の攻め込まれっぷりなんですよ……ローマとかさ、ヴァイキングとかさ、内部も国が乱立するしさ、あとフランスむっちゃ介入してくるし、フランスおまえはもう黙っとれよってなるし……。どうしよう、英国史、範囲広すぎてどこから手を付けたらいいかわかんない……。ああ、なんか学生時代の思い出が甦ってきた……そうそう、毎回テスト前ってこんな気分だったわ……まさかこの年になってこんなところで追体験するとは……人生とは……。

 ピコーン(天啓)

 そうだ!
――あ、あのですね、これね、今まで読んだハイランダー小説を分かる限り時系列に並べてみた早見表なんですけど!

(おまえは一体何を作っているんだというツッコミは無しの方向で)

 そうだ、そうだよ! 全部調べなくても〈ハイランド・ガード・シリーズ〉の周辺の話を重点的に調べればいいんだよ! このシリーズのための企画なんだし! つまり1作目『ハイランドの戦士に愛の微笑みを』の始まる1305年のあたり、もしくはその前後を調べればいいんだよ! ピコピコピコーン! よし! 範囲は狭まった! 当たりはついた! まずは登場人物だ! 実在編!

@ ウィリアム・ウォレス

 一作目『ハイランドの戦士に愛の微笑みを』の冒頭で、いきなり「あいつ死んだ」って言われてる人。
 本国の人達には「えー! まさかこの本、あのウォレスが死んだところから始まっちゃうの? ウソー!?」なんて大変ショッキングなのかもしれませんが、英国史に馴染みが薄い人間には「誰それ?」なわけで、知らない人にいきなり死なれても困惑しかないわけです。えっ、わたしその人知らないんだけど香典出さなきゃいけない? いくら包む? 連名でいいんでしょ? だめ? くらいの感覚。その後、ネット検索してようやくわかる。「あー、メル・ギブソンの映画(『ブレイブハート』米・1995年)の人ね」と。――ああ、あの顔を青く塗ってウオオオオオって叫んでる役の人ね! 了解、了解! 理解した!!

 ……うーん、でもね、考えてみて下さい。逆にね、スコットランドの人が日本の歴史に興味を持って、この国で有名な武将は誰だろうって調べた結果が例えば「織田信長」で、ネットで検索したらあの有名な話の「ホトトギス」がいっぱい出てたら、あーなるほど、このひと生前は野鳥愛好家か何かだったのね! とか思っちゃうかもしれないじゃないですか、画像だけだったら。――でも、そんなの嫌でしょ。ちゃんと安土城なんかも造ってたし、楽市楽座とかもやったらしいし、子孫はまさかのフィギュアスケーターなんですよ!? とか、できればもうちょっと詳しく教えたい。スコットランドの人だって祖国の英雄を「顔を青く塗ったメル・ギブソン」だけで終わらせて欲しくはないはず。(たぶん)
 というわけで、彼らの切なる願いを叶えるため、実在のウォレスさんが何をした人なのか、ここで不肖私めがご紹介致しましょう!

 

 イングランドに抵抗して各地で蜂起を呼びかけて戦ったけど、最後は味方になるはずのスコットランド貴族に疎まれて裏切られて、めっちゃ残酷に処刑された人。――以上!

 ごめんなさいスコットランドの人! わたしの脳味噌ここまで!

Aエドワード1世

 別名“スコットランド人への鉄槌”と呼ばれたイングランドの王様。
 何度も遠征してきて容赦なくスコットランド人を追い詰めたのでこう呼ばれた。〈ハイランド・ガード・シリーズ〉の中では、敵の大ボスのポジション。メル・ギブ……いや、ウィリアム・ウォレスをえげつなく処刑したのもこの人。馬で引きずって吊るし、性器切り取って内臓取り出して焼いて、四肢引っ張って四つ裂きにした上、生首を槍で串刺しにしてロンドン橋に晒したとかもう何だソレ。変態か。うちの国の英雄に何をしとるんじゃ、とスコットランド人が怒り狂ったのも無理はない。
 他には、背が高かったので“長脛(ちょうけい)王”なんて呼び名も。

Bロバート・ブルース

 〈ハイランド・ガード・シリーズ〉の中でのみんなの上司。スコットランドの王様になろうとしている人。かわうそくんではない。
 エドワード1世からスコットランド独立を勝ち取ろうといろいろ策を練るんだけど、最初の方はもうズタボロに負けちゃう。もう負けっぱなし。味方の大半を失ったり、妻子を人質に取られちゃったりする。(12月18日発売の最新刊『薔薇を愛したハイランドの毒蛇』は、このあたりの話)
 イングランドに負けて敗走してた頃の「逃げ込んだ先の洞窟で、蜘蛛が何回も巣を作るのに挑戦して遂に成功しているのを見て、俺もがんばろ……と気を取り直した話」が有名。いかん。これだけ聞くとただの「虫好きな王様」になってしまう。

 さあ、次回はいよいよこの時代の事を紹介するよたぶん!

第5回に続く。

<ベルベット文庫 ハイランド・ガード・シリーズ 好評既刊>
モニカ・マッカーティ・作  芦原夕貴・訳

『ハイランドの戦士に愛の微笑みを』

『ハイランドの鷹にさらわれた乙女』

『ハイランドの仇に心盗まれて』

★最新刊『薔薇を愛したハイランドの毒蛇』、好評発売中!

>>次の回へ

目次にもどる

ページ上部へ戻る

© SHUEISHA CREATIVE Inc. All rights reserved.