WEB連載

第8回「やっぱ気高く勇敢なヒロインはいいよね」

 こんにちは、コマです。

 メリクリ! メリクリ! どんどんどん! ぱふぱふぱふー!


いろいろ混ざってる。

 巷はクリスマス一色だぜー! (イエーイ) とめどなく流れていく〜!(イエーイ) 年末の特別支出〜! (イエーイ) どうやってこっからお年玉をー! (ヘイ) どうやって捻出しようかー! (ドン) いつ終わるっ! (ドドン) いつ止まるんだこの流出はっ! (ぱふぱふぉー) ジョバババババーーーー!!(ギャー)


 さてさて今回も、前回に引き続き〈ハイランド・ガード・シリーズ〉の要点解説、四作目『薔薇を愛したハイランドの毒蛇』編といきましょう!


表紙のお姉さん、ヒロイン・ベラの「派手な顔立ちの美人」ってイメージにぴったりだと思う。

 今作ヒロイン、イザベラ・マクダフ(通称ベラ)さんは、スコットランドの歴史上に名前が残っているだけでなく、珍しく「行動が記録されている」実在の女性です。中世の女性って高位の人でも名前だけしか記録がないことが多いから、やっぱこれって珍しいよね。
 で、何故このベラさんが歴史に詳しく記録されているかと言うと、彼女が「敵国国王エドワード1世に反抗した証拠がある」からなんですね。このあたり、ちょっと詳しく掘り下げてみましょう。

 ベラさんの生家であるマクダフ氏族は、代々「スクーンでの戴冠式で王を運命の石まで導く」という重要な役割を担っている古い高貴な一族でした。歴代の王が座ったという「運命の石」はエドワード王に1296年に持ち去られてしまっているので、尚のこと新王の戴冠式では彼らマクダフ家の者がその場にいる、という事実が重要になってくるんですね。
 で、周囲敵ばかりのロバート・ブルースさんが「自分がスコットランド王だ」と宣言するには、考えうる限りの象徴や伝統に則った形で即位して、後で難癖をつけられないようにしなくてはいけない。そのためにどうしても「マクダフ家のベラ」が必要だった、という背景があったのです。ここまでが前提。
 注目したいのは、この時点でベラさんが既婚者だったということ。またロマンス小説のヒロインとしても結構珍しいことなのですが、彼女は子持ちの女性ということになっています。作中の記述によれば15歳で結婚し、16歳で娘を産んだとされ、しかも相手は当時40越えの男性で、エドワード1世を支持するスコットランド貴族のバカン伯ジョン・カミン。
 ――ん? ちょ、待てよ……じょん・かみん?
 えっ、聞いたことあるぞ? えっ、ままままさか、ベラさん、教会で殺されちゃったあの人の奥さん……?


アイツ。

 ――いやいやこれね、違うんですよね。ジョン・カミンはジョン・カミンでも親戚関係の同姓同名。カミン一族の中の、あっちはバデノッホ卿ジョン・カミンで、こっちはバカン伯ジョン・カミン。従兄弟という間柄なんだそうです。ロバートさんちの時も思ったけど、名前のバリエーションが少なかったのか名付けを考えるのが面倒臭かったのかは分かんないけど、親族間で同じ名前を使い回す風習マジなんなん……?


ややこしいので青くした。

 つまり、ベラさんはロバートさんに教会で刺し殺されたジョン・カミンの「親戚のジョン・カミン」に嫁いでるわけですね。
 でもそうなると、立ち位置が完全にロバートさんの敵じゃん! ってなりますよね。
 だって従兄弟を殺されてるんだし、夫一族激おこじゃん、と。そう――そうなのです。バカン伯の妻、ということで本来ベラさんはロバートさんにとっては敵方の女性。つまり生家マクダフ家の者として戴冠式に参加するということは、夫を裏切った、と宣言するようなものなのですね。離婚が原則許されなかったキリスト教世界において、離婚覚悟で起こさなければいけない行動だったわけです。
 一方、ベラさんとロバートさん個人の関係については、作中ではロバートさんが17歳の時にベラさんの父のもとに修行に来たことがあった、とありますので幼馴染のようなものだったのかもしれません。兄と妹のような関係だった、と作者のモニカさんは二人の間柄について書いています。
 その兄のように慕っていたロバートさんが即位する――その報を聞き、この一見全く承諾の見込みがなさそうなデメリットしかないような要請を、ベラさんは受け入れます。離婚上等、かかってこいや。作中、夫と不仲であったことも描かれてはいますが、一番の理由はやはり大義のため。ロバート・ブルースこそスコットランドの王に相応しいという絶対的な確信のため。自分こそが真の王を誕生させるのだという義務のために彼女はロバートさんの元へと向かうのでした。――ううう、熱い! 熱いよベラ姉さん! かっこいい……!
 今作『薔薇を愛したハイランドの毒蛇』のなかで、ベラさんはヒーローであるヴァイパーことラクランの手を借り、カミン一族の居城から抜け出すのですが、このとき彼女は28歳。12歳の愛娘を連れて行くことも出来ず、泣く泣く夫の元に置いての道行きなのでした……。


 無事戴冠式での大役を成し遂げた英雄であるはずのベラさんを待っていたのは、エドワード1世による執拗な追跡の日々でした。
 ストラスタメル、キルドラミー、テイン……本文中、様々な地名が出てきますが、とにかくベラさんは劣勢のロバートさんの本隊とは別れ、別隊のロバートさんの妻子や縁者と共に、スコットランド中を反逆者として逃げ回らなければならなくなるのです。有力者一族の夫を裏切っているのですから想定内の逃亡生活だったとしても、一行には小さな子供も含まれていたらしく辛い旅路だったに違いありません。人目を避けて野山に隠れる毎日……辛いなあ。そしてついに、一行はセント・ドゥサックの礼拝堂で捕縛されます。あの輝かしい戴冠式からまだ半年しか経っていない、その年の内の出来事でした。

 その後のベラさんがどうなったか、それは是非今作を読んでみてください。史実と同じく大変過酷な状況に追いやられてはいますが、モニカさんは彼女に最高の結末を用意してくれています。読み終わった時のカタルシスったら! 作家って本当すごいなあ、ってなりました。あ、あと「やっぱエドワード1世は変態だわ」ってなります。


実際は4年間投獄されていたという説もあるらしい。


 でね、このお話の面白いところが、今作主人公ヴァイパーことラクラン・マクルアリの立ち位置なんですけどね。


そういや妻殺しとか言われてましたね。

 んんんん!?
 えっ、ラクランさん、あのマクドゥーーーーーガルのおじさんと義理の兄弟だったの? まじで? え、じゃあこういうこと????


ドロドロしてるね!!

 もお……モニカさん、よりにもよってそんなところにヒーロー役を配置する? 天才なの? と、相関図を書きながら思いましたよわたし……。同じ元既婚者同士で、図らずも「裏切り者」という立場に置かれた男女……。ベラさんもラクランも親しかった者達から罵られる立場になるという運命ではありますが、お話の中では誰よりも純粋に、とにかく一生懸命生きているのが伝わってきて、応援せずにはいられない二人なのでした。個人的には、ベラさんの娘に向ける愛情に涙したなあ……。

 ――というわけで、モニカ・マッカーティ『薔薇を愛したハイランドの毒蛇』好評発売中でっす! すっごく面白いよ!!

 次回は「キルトを穿くべきなんだと思い至ってしまった朝」の話をお送りいたします! ではまた!

→第9回に続く。

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モニカ・マッカーティ・作  芦原夕貴・訳

『ハイランドの戦士に愛の微笑みを』

『ハイランドの鷹にさらわれた乙女』

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