「気」の日本人

「気」の日本人 「気」の日本人

著者:立川 昭二(たつかわ・しょうじ)

■判型/総ページ数:四六判ソフトカバー/272ページ+カラー口絵
■定価:本体1,300円+税
■ISBNコード:978-4-7777-1012-6
■発売年月日:2010年11月26日

歴史学者の知恵が詰まった「気」の日本人論
毎日の挨拶に入っている「気」のつく言葉

「今日はいいお天気ですね」
「お元気ですか?」
「気をつけて行ってらっしゃい」
わたしたちは日常生活で無意識のうちに「気」のつく言葉をたくさん使っている。では、これほど頻繁に用いられるのは、なぜなのだろう。本書は「気」のつく言葉を手がかりにして、目に見えない「気」の正体にせまる。書き下ろし。

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「気」ほど、多義的に用いられる言葉はない

Aさんに気(き)がある→好きだ
糖尿の気(け)がある→兆候がある
就活が気(き)になる→心配だ

「気」という言葉には日本人特有の使われ方があり、しかもきわめて多義的に使われます。こうした「気」のつく熟語や慣用語がたくさんあり、古くから広く使われて今日に及んでいるということは、「気」というものが日本人のメンタリティ(心性)の基層に深く根ざし、文化の核心を形づくり、目に見えないところで生活と社会を支配していることを物語っているといえます。


――本書「はじめに」より

かつて「聞く」という言葉は「気来(きく)」が語源だった。
相手の「気」が自分のところまで「来る」から「聞こえる」と考えた。


目 次

はじめに/「気」の日本人

第1部 気と心
1「気」と「心」/日本人の心性
2「気持」「気分」/心の表情
3「気がする」/心の曖昧性
4「気がつく」/気と五感
5「気になる」/心の拘束性
6「気が合う」/自己と他者
7「気をつかう」/気と対人関係
8「色気」「浮気」/気とエロス
9「意気」「いき」/気の美学

第2部 気と体
1「気」と息/宇宙と身体 
2「気」と腹/日本人の心身観
3「元気」「病気」/日本人の健康観
4「気を養う」/養生と気分転換
5「気持いい」/体感的多幸感
6「気質」「気品」/性格と品格
7「やる気」/気と生きがい
8「気力」「気合」/気のダイナミズム
9「霊気」/気とアニミズム

第3部 気と社会
1「気配」という交感力
2「空気」という呪縛力
3「景気」という感染力
4「人気」という浮動力
5「気風」という同化力
6「気運」という変動力

おわりに/「気」とコスモロジー

 現代詩のなかの「気」
 星野富弘/金子みすゞ/川崎洋/伊藤信吉/新川和江
 「気」のついた言葉一覧
 あとがき
 引用文献・参考文献


〈著者プロフィール〉
1927年東京生まれ。早稲田大学文学部史学科卒業。北里大学名誉教授。歴史家。とりわけ文化史、心性史の視点から、病気や医療について考察する。1980年『歴史紀行・死の風景』でサントリー学芸賞受賞。著書に『病気の社会史』(NHKブックス)、『病いの人間史』(文春文庫)、『日本人の死生観』(筑摩書房)、『からだことば』(ハヤカワ文庫)、『養生訓に学ぶ』(PHP新書)、『生と死の美術館』(岩波書店)、『足るを知る生き方』(講談社)、『年をとって、初めてわかること』(新潮社)他多数。


装幀/板倉敬子

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