WEB連載

第9回「最終回 おいでよ! ハイランダー沼へ!」

 こんにちは、コマです。

 そう、あれは去年の1月のことでした。
 チェック柄のタオルをたたみながら、ふとね、わたし思ったんですよね。

「あ、キルト着てみよう」

 ……って。

 「なめらかに盛り上がった筋肉を覆い隠す」だの「開いたところから覗く逞しい太腿」だの「その下では彼自身がすでに硬くなっていた」だのと小説のなかでさんざん描かれているにもかかわらずイマイチ着方も着心地も分からないという、あのハイランダーの象徴であるところの伝統衣装、キルト。
 そう――私はハイランダー云々を語る前に、アレを実際に身につけてみるべきなんじゃないの? 彼らの筋肉を語るには何よりまずアレを体験してみるべきなんじゃないの……? 夫も息子も娘も出掛けてる今が絶好にして唯一のチャンスなんじゃないの……?

善は急げ。
 私はそれまでにネットで拾ってあったキルトに関する知識を総動員して、急ぎ以下の物を準備したのでした。

@とにかく長い布(5〜6メートル)
 私が着てみたいのは女子高生のプリーツスカートのようなキルトではなく、ハイランド地方の人が昔から着ていた「一枚布を折って着るタイプ」のグレート・キルト(別称プレード)なので、とにかく長い布が必要でした。しかし、こんなのしかなかった。


「20年くらい前に色味が好きで買ってソファにかけたり床に敷いたりして
さんざん使って擦りきれちゃったけど未だに捨てられない謎の民族っぽい布」

A腰に巻くベルト
 100均のしかなかった。本当はもっと太い革のやつが良かった。なんとなく。

 よし、とりあえずこれでいこう。
 物の本によると、腰部を中心にギャザーを寄せればいいらしい。なるほど、これで厚みを増すわけやね。

 よし、床に伸ばして……。

ヒダを……ヒダを折って……。


幅がっ……

 ――いかん、幅が圧倒的に足りない。3回くらいしか折れない。

 よよよよし、じゃあ向きを変えて…って横にしてみたけど駄目だ全然足りない。巻いても尻しか隠れない。前がまったく隠れない。これだと丸出し。ハイランダーのハイランダーが丸出し。

 うーん、じゃあ、どうしよう……。
 5メートル強の布、このためだけに買ってくる? いやいや、さすがにそれは時間もないし……。それに、買ったとしてその後どうするのよ? 巻く? 日常的に巻く? でも宅急便の受け取りとかどうすんの? あそこの奥さん平日の午前中に行ったら必ず腰にシーツ巻いて出てくるんだけどヤバくね? とか会社で言われちゃうよ? 社会的に死なない? だいじょうぶ私? (大丈夫ではない)

 うーん、でもなあ、一般家庭にそんな簡単に5〜6メートルの布があってたまる……って、あったーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!


ニト◯の敷きパッド シングルサイズ

 そうよ! これよ! どこの家にもある長い布! 敷きパッド!
 この使い古した4年物のニ◯リの敷きパッドの縦幅が200センチだから、2枚合わせたら4メートルになるじゃない! ギリギリいけそう! なんとか雰囲気だけは味わえそう!

 ――ということで、横幅を合わせて縫いました。※このとき、正気に戻らないのがポイントです。


ざくざく。

 やった! できたーできたよー!




やったー長くなったよ―!
※みかん箱のノスタルジーには触れないで

 よおし! これなら折っても……!


やったあああ

 無事、10山ほどモリモリ折った立派なヒダを作ることが出来ましたー! 本当は20山くらい折りたかったけど、――まぁいい! 今回はコレでいい! 腰に巻けて、なおかつハイランダーのハイランダーが隠れさえすればそれでいい!!

 さあ、ではいよいよこの下にベルトを通し、

 腰に巻く。

 こんな感じに!

 かっ……完成じゃあああああああ!!!


ツートンで可愛いじゃん。

 ふー……巻けた! 巻けました自作のキルトが!
 いやあもうこれは完全にキルトですな! キルトったらキルトですねこれ! 結局、幅が足りなくて肩には掛けられないけれども、でもでも、もっかい言うよおおおこーれーはーキルトだーよォォォォォ!!!! さすが天下のニト◯! キルトまで売ってるんだよ超便利ィィィーーーー!!!!

 うん。うん。うん。(着心地を確かめつつ)

 ええっとですね、感想、感想と致しましては――うん、人生初キルトを着てみた感想と致しましては、そうですね……この「圧倒的な下半身の安定感」――是非この点について重点的に言及させて頂きたいです!
 実際に着てみると分かるんですが――すごいんですよ! これ、めっちゃ暖かい!
 もっとスカートみたいに中がスースーするかと思ったら、今までの人生でここまで完璧に下半身が防御されたことがあっただろうか、ってくらい、ものすごい安心感のあることに驚きました!
 後ろに寄せたヒダが外気を完全に遮断してるし、布を重ねたことで厚みが出てクッション性もあるからゴツゴツした場所に座っても全然痛くない。お尻に座布団が常にあるみたいな感じ。なんかもう尻だけは絶対に守るぞ! という気概すら感じますねこのヒダの寄せ方は。寒い地方の衣装って感じがすごくします!
 ――そうだ、同時にこれでようやく理解しました!
 よくスコットランド人男性が自国の伝統衣装であるキルトを着るときはノーパンが正式な穿き方らしいよ、みたいなことが話題になるんですが、あれは……あれはね――このホールド力があれば「穿いてなくても全然問題ない」が正解です! 少なくともこのグレート・キルトの巻き方だったらむしろ穿いてたら邪魔だもの。こんなかさばる布をかき分けて裾から手を入れて下着をいちいち脱ぐなんてすごく面倒くさいし、それならむしろ穿かずにいてしたくなったらバッとめくればいいじゃんね! したくなったらね! うんうん!
 そう、だからハイランダーにとってノーパン問題は無問題! 言い切れる! キルトを実際に着てみた身として言い切れる! 穿いてなくても大丈夫だ、と!
 ……ああ、よかった! これで検証出来た! よかった……ありがとう! ありがとう◯トリ! ありがとうハイランダー!!

(※このあと、糸を解くのが面倒だったので、しばらく縫い合わせたままで使用しました)

 いや〜〜〜ハイランダーってやっぱ最高ですねえ……(しみじみ)


 さてさて、長々と連載させて頂いておりました『ハイランダーの魅力を理解するための基礎知識』、実は今回の第9回で最終回です。
 今まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!

 集英社クリエイティブの編集部の皆様、フォロワーの皆様、この連載を見てくださった皆様方には足を向けて眠れません! もうこれ立って寝るしかなくね? って感じで、感謝感謝でございます。
 2ヶ月とちょっと、お付き合い下さって本当に本当にありがとうございました! あー楽しかったあああ――!!!!

 それでは、またどこかでお会いしましょう!

 ハイランダーばんざーい!

2019.1 コマ

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モニカ・マッカーティ・作  芦原夕貴・訳

『ハイランドの戦士に愛の微笑みを』

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